シェアその14

依存症者は嘘をつく


よろしくお願いします。

 兄とは小さいころから仲が良く、私を自転車の荷台に乗せておもちゃ屋さんなどに度々連れて行ってくれました。隣町の大きなおもちゃ屋さんまでは就学前の私一人では到底行けなかったので、そんな兄は私にとって憧れの存在でもありました。しかし、シェアその2で話したように兄を家業の跡取りにするためのスパルタ教育が始まり、兄が謎の病気で入退院を繰り返すようになりました。

 

 好きだった兄が弱っていく様を見ること自体が、そしてそういった加害行為が家の中で起きていること自体が私にとってトラウマであったことはこれまで話した通りです。そういった中で自分も同じ目に合うかもしれない、兄がダメになったら次は自分という不安を抱えながら生きていました。その大きな不安を防衛するために兄が打擲されているのは兄が悪いことをする悪い子だからだと決めつける必要がありました。兄のようにならなければ、兄の対極の人間になれば私はこの家で大事にされるだろうと。

 

 言い換えると、あの家で生き延びるためには大好きだった兄を無理やり嫌いになる必要があったとも言えます。小さい子供は白いものでも親が黒と言えば何の疑問も持たずに自我に取り込みます。父や母と一緒に兄への不満、文句に同調する必要もありました。

 その頃から自分の気持ちに嘘をつく癖が始まったのだと思います。傷つけられた時にも気にしていないフリをしたり、本当は大好きなことなのに興味のないフリをしたり。依存症者は誇大な自己イメージを維持するために他人に嘘をつくことが多いですが、私は他の誰よりも自分自身に対して嘘を付き、内なる自分であるインナーチャイルドをいじめ続けてしまっていたのだと思います。これでは欲求充足も出来ず、自尊心も育ちません。感情が鈍磨し、ブルーな気持ちが悶々と続くACの出来上がりです。

 

 結局、兄と父の関係性の問題は各々二人が考え、解決することです。必要なら治療方法もある。子供だった私はあまりにも兄と父の関係性の問題を私個人の問題として取り込みすぎた。以上です。ありがとうございました。