シェアその6

私を返してもらう


 

よろしくお願いします。

 私の家の祖母、つまり父の実母が入院しています。先日そこから電話があり、祖母の体調が悪くなってきたのでとある薬を使っていいかという大事な連絡でした。母が電話を取ったのですが、父に確認するために電話を変わるようにお願いしました。アル中の父はもう既に晩酌モードでそれをずっと無視していました。さらに母が大事な電話なのでどうしてもとお願いすると「そんなの出ねえよ、馬鹿野郎!この畜生!」と母を怒鳴りつけ始めました。

 

 最近は朝に挨拶をしているだけなのに父が私を無視するどころか、睨みつけてくることがありました。しかしこれは逆にやったぞ!と思いました。最初は私も怒りやら沸いてきましたが、すぐに思ったことは(この人はいったい何を恐れているのだろう)と。今までは何を頑張って伝えようとしても「だったら何だよ」と笑いながら流されていたのですが、最近私も自己主張をするようになってきたので、どうやらそうもいかなくなってきたらしい。生の感情が返ってくるようになりました。前は可愛い次男坊がハムスターのようにキーキー何か言っていると流されていたものが怒りとは言えキチンと反応が返ってくる。これはもうコミュニケーションだ。ずっと0だったものが0.01くらいになっている。例えマイナスでも構わない。良い悪いではなくこれがスタートだ。この状況を見て、私の治療者は私を含めたコミュニケーションが始まってきていると評価しました。

 

 父と戦うつもりもないし、その理由もメリットもない。あの家に革命を起こそうというわけでもない。単に自分は自分で良いのだと思っただけだ。しかし家の恒常性に変化をもたらすので家の中は一時的に不安定になり様々な防衛が出てくるかもしれない。それと対峙する必要はある。それに対して提案や譲歩をしたり、落とし所を見つけたり、放っておかねばならない。それは治療者や仲間と検討しながらうまくやりたい。私に初めて与えられる戦略性と自己効力感。楽しみだ。

 

 父が出来なかった海外留学等を達成し、自分の思い通りになっていた乳臭い人形が今は首を縦にも横にも振るようになり、家の中で雄の匂いを醸してきている。治療で回復していっている。そして依存性者は怖いから支配をしようとする。主に外から見えない家庭等の閉鎖空間で依存を展開する。私がそうだったからわかるが、そんな中に支配できない存在があることが何よりも怖いのだ。ただその分、これからの私の言動には今までにはない責任が課せられる。そしてそれもまた私を成長させてくれることだろう。

 

 しかし回復に向かっている自分が偉くなっているわけではない。依存性者は度々それを勘違いする。酒に溺れ高慢なままに死にたいというエゴがあり、回復してそこそこ健康に生きたいというエゴがあるだけだ。同じエゴ。自分は底をついてたまたま後者になったというだけだ。

 

 だから私は父のアルコール依存等の問題に対して全くの無力だ。私は自分側の道路を綺麗にするだけ。そしてメッセージ活動という謎の行動だけ。それがこの場合、何を意味するか実は私にもわからない。どのような言動をどのタイミングでしていくかわからないし、自分を守ってそれでおしまいなのかもしれない。そんなものはハイヤーパワーにしかわからない。どんなに優れた治療者も治療で何が起こるかわからないことと一緒。ただ、自助グループに行っていればその声を聞けるかもしれない。

 とまれ、初めましてお父さん。これがあなたの息子だ。これが私だ。悪いが私を返してもらう。以上です。ありがとうございました。